株式会社つくし社長坂本隆司、2011年2月14日永眠。享年60歳。余りに短い人生でしたが、この人ほど稠密な時間を生き抜いた人も珍しいのではないか、それはゆうに普通の人の80歳90歳を陵駕するものだったのではないだろうか。
皮肉なことに彼がよく口にする言葉は「いのち」だった。「生」に対する情熱がほとばしるように話す人だった。その情熱は、しかし、内に向けてというより外に向けてのものだったのかもしれない。動物であれ植物であれ、生あるものにとことん情熱を傾けた、そんな人生だったといえるかもしれない。
捨て猫捨て犬を見ると放っておけなかった、何十匹飼っていたことだろうか。そんな彼の生き物に対する情熱が見事に花開いたのが淡水巨大魚の水族館だった。その水族館をテーマにしたウェブサイトを記念に保存しておきたいと思う。
魚が大きく育ちますか?
「つくし」の水つくりは本物です。淡水巨大魚の飼育で鍛えぬかれた技です。
この水族館の主役達は5~6年前まで皆健在だった。やがて長命を誇った金色のアロワナが姿を消し、そしてゆっくりと他の主役達も姿を消していった。しかし、坂本は新しく替わりを育てようとしなかった。おそらく長年苦楽をともにした朋友を失っていくような気持ちだったのだろう。一方飼育が難しいとされるこれらの魚達を大きな成体まで育て上げ、普通以上の寿命を生きながらえさせたことで、飼育の技を極めたという満足感もあったことだろう。
水族館の主役が華だったとすれば、チー君日記(下記2つ目リンク)の主人公はよぼよぼの老犬である。介護を引受けてから約75日で寿命が尽きるのであるが、坂本の生き物に対する愛情は華であれ老残の動物であれ全く変らないひたむきで純粋なものだったことが、背後に見え隠れする老母への想いと重なって、胸を打つ。
自然の摂理・復元力、職人芸と科学技術などについて思いを綴る
動物に対するひたむきな愛情がにじみ出る老犬介護の話
食材への薀蓄を傾けたメールマガジンのバックナンバー
メールマガジンで植物食材を取上げたことがあった。坂本の本職はレストラン経営であり、根っからの調理師であったから、食材には詳しかった。取上げた食材は22種であった(上記3つ目リンク)。機会があればまだまだ他の食材についても語れると言っていたが、その機会は失われた。レストラン経営は長男があとをついだ。いつか父の技を超えた時、食材を語り継ぐ日がくるかもしれない。
坂本の言は、実践技に支えられていた。水つくりの技は、淡水巨大魚の飼育にみるように本物だった。本職の調理の技とあいまって、それらは、動物や植物に接したとき無数のアイデアを彼にもたらし、動植物飼育栽培の技を極めることにつながった。理屈では言い表せない、しかしそこに厳然たる真実が見えるではないか・・・そんな思いをしたことが幾たびあったことだろう。そのもどかしさを伝える「自然の復元力」、これも保存しておきたい(上記1つ目リンク)。
汚染された環境から自然を取り戻す、それは坂本の強い願望であり、水つくりの技・調理の技・動植物飼育栽培の技に裏打ちされた信念でもあった。究極のところ、「生」に対する情熱は、人間社会に向けられたものであったことの証左である。坂本のライフワークともいえるこの仕事は、次男雄作が新会社を起こして引き継いだ。新会社の名称はT.S.エコファーム、坂本隆司の頭文字を冠している。旧名ドクターフーズで親しまれた還元剤もT.Sミネターゼと名を改めている。尚「淡水巨大魚の水族館」と並んで当サイトで運営してきたサブサイト「環境汚染に挑戦する」は、一部内容を改めてT.S.エコファームに移管しましたが、旧版も保存しておきたいと思う。
魚が帰ってきますか?
河川の汚染に挑戦します。生態系の復活がキーワードです。
今は坂本隆司の冥福を祈るばかりである。(2011年9月 ウェブマスター記)